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             四ノ巻 平成11年4月刊

    

編集長対談 論客 呉 智英
和をもって尊しの和はごった煮スープ

[特集]東洋の叡智を研ぐ新世紀を東洋思想で武装する
◎東洋思想と武道b絶対から相対へ ◇松岡正剛
◎儒教と殉死b切腹に見る原儒の風景  ◇小杉英了
◎江戸儒学と武士道b山鹿素行の「義」の哲学 ◇林田孝
◎仮想対談 孔子とソクラテスb不死なるものへ ◇橘薫
◎朝鮮自尊独立運動b東学b開闢の思想  ◇梁億寛
◎「東周英雄伝」を読むb徳に触れ、罪を知る ◇前田日明
前田日明 引退試合特集 観戦記・前田日明論
★異質一代 風柳祐生子
★度を超えた男 山口日昇 
★ドールマン、前田日明引退試合を語る 遠藤文康
★前田日明語録 「自分自身の物差し」
■陸軍中野学校の真実と謎   ◆村尾国士
■新しい歴史教科書を「つくる会」というベクトル ◆菅 浩二
無銘刀宣言   
勝戦国とマルキシズムの二つの歴史観に
  翻弄された歴史教科書で育った我ら。
祖先の日常の営みを見つめることから
日本人の自画像を描き始めたい。

【無銘刀】
 郷里に住む従兄弟から一枚の写真が送られて来た。貴重なものだからフロッピーに保存してくれとあった。それは遠い記憶の中で、一度だけ見たことのある私の父の出征時の記念写真だった。 生家の前で父と祖父祖母、兄弟全員が並んで写っている。出征祝いの幟も見え、写真の下に昭和十二年八月十四日とある。この六十二年間で十人兄弟の内、四人が他界した。
嫁ぐまで一緒に暮らし、よく遊んでくれた二人の叔母は、当時ほんの子供で、年頃が似た叔母らの孫がよく似ているのに驚く。生前会うことはなかった叔母、叔父の顔に従兄弟たちの顔が重なる。この血族の恂門磊揩自認すべく額に入れ、目につくところに飾った。
次巻特集の「教科書」のテーマを思案していたとき恁倦ーの写真揩ェ目に止まり、二人の叔母の想い出の断片が蘇った。
物置で幼い私の捜し物を手伝っていた叔母たちは、子供のときの絵本を見つけた。二人は懐かしそうにページめくっていたが、いつしか二人して歌を口遊み始めた。「青葉繁れる 桜井の〜」。そして、その本を私に読んで聞かせてくれた。楠木正茂という名をそのとき覚えた。
叔母たちの青春は、まさに『青い山脈』の世代であり、戦前は暗い悪しき時代のはずだが、今も耳に残る、あの歌声の心地良い響きは軍靴の響きと無縁だった。一夜にして史観が異なる教科書を手にした叔母たちだが、心の中の「青葉繁れる」は教科書で作られ、また改ざんされるものではなかった。
今巻の『刀剣講話』で高山武士さんが語っている。「歴史学、考古学は我々祖先の営みをより正確に把握する以外、何ものでもない。唯物史観とか皇国史観などのイデオロギーは祖先の営みを知ることとは関係ないこと」と。叔母たちの怏cみ揩ヘ史観という教科書とは関係なく、私の中に今も伝えられている。(杉山頴男)