<対談、ほんのさわり>
佐竹 はじめに前田さんにボブ・サップ人気の秘密は聞かれたけど、プロレス的という言葉が出たので言いますが、70年代のジャボ・マックス、筋肉マンのムキムキマンと同じなんですよ。格闘技というよりプロレスに近い存在だから人気ある。だからバライティー番組が合う。
前田 たしかにパワーに圧倒されるというわかりやすさがある。
佐竹 格闘技とプロレスの区別がわからなくなったのも、いまの社会の何でもありが反映しているじゃないですか。区別がわからなくなったというのは、いまの観客が格闘技とプロレスの垣根を気にしなくなったからだと思いますね。
前田 たしかに。ビートたけしが現在のK―1、プライドは古代ローマの映画「グラディエーター」のような残酷ショーになりつつあると雑誌で言っていたが、ボブ・サップの出現でプロレス的なものを飲み込んでしまった。プロレスがむづかしい時代になった。
佐竹 格闘技も同じでむづかしい時代になりましたよ。
前田 猪木さんはプロレスと総合格闘技を同じイメージにしようと思っているようだね、自分の言い訳のために。
佐竹 前田さんは猪木さんのところでプロレスをやっていて、猪木さんのプロレス観みたいなものはよく知っていたんでしょう。
前田 当時、馬場さんの全日本プロレスは、お客さんはまだプロレスがフィクションたることを知らないだろうという前提のメルヘン的な部分でプロレスやっていた。新日本プロレスの猪木さんは、もうプロレスはバレているけど「おやっ」と思わせるためにはどうするかを考える、と言う戦略でだったね。
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