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創刊準備号零ノ巻

前田日明、リングス引退記念カード付き平成十年七月二十日発行  
   定価500円 ■品切れとなりました。

 

創刊メッセージ

 戦後半世紀、 無抵抗にイエローヤンキー化した我らが、 己の身丈にあったトポスを見つけるための 砦となるのが武道である。
 

◇編集長敬白 前田日明

古いものを見るとは、どういうことなのか。
日本刀鑑定の勉強をするようになってよく思う。
それは、たぶん対象の中に秘められた気配を感じることじゃないか。
人は気配によって感覚を動かされ、対象の中にある品格を察知したり、また感じ取った品性から醜くさを感じとったりする。
それは自分の感覚にとって非常に大切な、ものを見るための前提となる。
しかし、近頃の世の中、どうも気配を無視したところで 人を論じたり、物事を結論づけたり……。
静かに日本刀を見ていると、ふと「ああ、そういうことなのか」と、突然、納得することがある。
あたかも本能的に気配から透かして見た作者の気概を察したかのように。
相手を察するという感覚は、戦うためにも重要な感覚だ。
それは挌闘家でなくとも、日々生活する人にとって、欠くことのできないものだと思う。 そんなことを、日本刀に教えてもらっている。

◇「無銘刀」 発行人・杉山頴男 

 10年前の冬、ナイキの本社に取材に招かれポートランドに行った折の某日、市街を流れるコロンビア   リバーの 川岸のベンチに座り、夕暮れの川面を眺めていた/先日までの取材先で出会った「親切で善   良なる」アメリカ人 たちの顔を川面に浮かべていた。/川面が風に乱れると彼らの顔が別の顔を見せた。何でも親切に教えてくれる彼 らが、今度はお前が教える番だと催促する。再び波紋が立つと、俺たちの真似ばかりして、俺たちが喜んでいると 思うかと嘲笑する/帰国し、目についた剣道、居合、弓道、尺八など習い始めた/かつて『週刊プロレス』『格闘技通信』で出会った読者に伝えたいことがあって『武道通信』を創刊します。