■鉄を造る者 シャーマン
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隆慶一郎 むかしむかし よく讀んだ 『死ぬことと見つけたり』『吉原御免状』『鬼麿斬人剣』 『一夢庵風流記』『影武者徳川家康』etc
『死ぬことと見つけたり』 書いた経緯 気に入った 東大文学部 学徒出陣 支那大陸転戦 軍部推薦図書 『葉隠』三冊 中頁を破き ランボー『地獄の季節』(小林秀雄訳)の頁 隠し持つ 活字に飢えたので つい 破らなかった 『葉隠』 の部分 読み出す 「山本常朝 ただ者ではない」と魅了された
「聞書」のどのあたりを読んだか もっと詳しい経緯 知りたいものよ
十六ノ巻 【刀と日本人・続 隆慶一郎の異色伝奇小説 名工・清麿の末期の願いに賭けて、山人鬼魔が往く 小川和佑 】 源 清麿 江戸時代後期の刀工 水心子{すいしんし}正秀 大慶直胤{たいけいなおたけ} と並び「江戸三作」と称される これは編集部:注
さて 小川氏の語りに 耳をかたむけよう 鉄を造る者 鍛冶屋 シャーマン 「呪術師」であった 鉱石を液体にし 金属をつくるという技 原始社会では 想像を超えた驚異の技であった この冶金の技 神から特別な待遇を得た 人間にだけ与えられた人だと信じられた 鍛冶自身も 神から選ばれた者というプライド 大量の火を扱う鍛冶たち 常に危険と背中合わせ 鍛冶屋 神の加護を得ていると自覚
日本 アメノヒトツノ神(金屋子神)を祭る鞴{ふいご}祭りは 刀鍛冶ばかりでなく 野鍛冶 鋳物師{いもじ}まで含め この神を尊敬し 心身を清め 斎{いつ}き祭る
これも編集部:注 アメノマヒトツは「目一箇(アメノマヒトツ」 いわゆる「一つ目小僧」 中国地方を中心にたたら製鉄や鍛冶 鋳物を行う職人たちに 信仰されている鉄と火の神 金屋子神(かなやごがみ) と同一視 また別神との説 アメノヒトツはアマテラスを岩屋の外へとおびき出す有名な天岩戸 祭りに使用する刀剣類や斧 および鉄製の大きな鈴などを作った また ニニギが地上を治める為に地上に降り立った天孫降臨 ニニギに付き従う神の一柱として地上に降り立って鍛冶の祖神となる
鍛冶は人間の能力を超えた技術を授かったため さまざまな禁忌{きんき} タブーと儀礼が伝えられた たとえば 女性の立ち入りを禁じる「女人禁制」 金屋子神が女性に嫉妬するから 金屋子神 女神か いや 古代社会通念 月経を「血穢{ちぎたれ}」として 不浄なものとみなすことで「不浄視{ふじょうし}」だろう
また鍛冶たちは土地に定着し農業を行わない 農耕民に農具や武器を与えることの出来る技術集団であることに 誇りを持っていた 鍛冶は 鉱石を求め 諸方を巡遊した 本来 漂泊民である
−−−−−−★−−−−−− 旧東海道沿い 生家の東側 隣のとなりに 鍛冶屋があった いつも 体格のいいニイサン オジサン 火の前で トンカン トンカン 鉄を打っていた 幼き吾 いつまでもじっと見つめていた
2025/09/01(月)  |
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