■矢は 中心から出て 中心に入る
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そのようにして一週間 二週間と経ち…… ひと月 ふた月と経っていった…… 三年目になりました されど 例の「技の無い技」に四苦八苦
四年後のある日 的の前に立たされた いままでは 巻藁{まきわら} 2メートルほど先に置かれた大きな稲藁 今度は28メートル離れた的(霞的) 直径36センチ(尺二)
ヘリゲル → 当てるには どうしても狙わなくては 阿波 → いや 狙ってはいけない 的のことも 当てることも 考えてはいけない 弓を引いて 矢が離れるまで待ちなさい
阿波が射ると 矢は的の真中へ 阿波 → 貴方は私が射るのを よく観察したか 私が目をほとんど閉じていたのを 見たか 私は的がぼやけて見えるまで 目を閉じる すると的は 私の方へ近づいてくる様に思われる これは心を深く凝らさなければ達せられないことである それは私が仏陀と一体になることを意味する さすれば 矢に 有と非有の不動の中心に 矢が中心にあるというのは 我々の目覚めた意識を意味する 矢は すなわち中心から出て 中心に入る だから貴方は的を狙わずに 自分自身を狙いなさい 貴方を射当て 同時に仏陀と的を射当てる
ヘリゲル 十年 二十年 弓術を習っても 弟子のレベルのままの多くの弓道家を知っている 自分の日本滞在には限りがある ある日 阿波を訪ね 「私は的にあてるということが理解できない」と 阿波 → 貴方を先に進ませる最後の道が一つだけある それは使いたくないが 今晩 もう一度 来るように
さて アノ有名なシーン 次回に
2025/11/07(金)  |
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