■追悼 五味康祐{やすすけ}
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松本清張 『或る「小倉日記」』 昭和二十七年(1952)二十八回芥川賞 よく知られているが もう一作 同時に受賞した『喪神{そうしん}』 隠棲した剣客から妖剣の奥義を授かる若者を描く 作家は五味康祐
『喪神』につづいて 『柳生連也斎』『桜を斬る』など 従来の芥川賞作家には見られない 物語性に富んだ江戸初期を 背景にした数奇な時代小説であった
『喪神』は人間 誰しも持っている臆病な自己保全本能を描き 『柳生連也斎』では影を踏む瞬時が生死の別れ目となす二人の剣豪の勝負を 『桜を斬る』では講談の寛永御前試合の想定を得て 二人の剣士が吹上御苑の八重白花の「氷室の桜」を斬って争う
難解な観念小説 イデオロギー小説に飽きた純文学読者に 他愛もない通俗時代小説に満足できない読者に 五味康祐の出現は 小説を讀む喜びを見出した
【刀と日本人・続 小川和佑 第五話 日本浪漫派作家・五味康祐 憂国に見る日本の心と刀 ――五味康祐の未完の傑作 『柳生稚児帖』 武道の真髄と憂国を説く】
次回で
2025/11/15(土)  |
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